お世話になりました

愛すべきものすべてに捧げます

Ain't Nobody Here But Us Chickens(細野晴臣)

 

Vu Jà Dé (ヴジャデ)

Vu Jà Dé (ヴジャデ)

 

 

「Vu Jà Dé」Disc1の2曲目に「Ain't Nobody Here But Us Chickens」という面白い曲が入っている。

この曲のみ、細野さんの「意訳」がついていて、いい風情なので一部載せたい。

 

ある夜、農夫のブラウンは空気を吸いに外に出て、

用心深く鶏小屋を閉じたとさ

「鶏小屋の中に何かいる 、誰?」

ま、これは人から聞いた話なんだがね・・

 

ニワトリ以外誰もいなかったのさ

自分たち以外誰もいないんだ

だから落ち着いて、騒ぐのをやめようってね

ここには自分たちしかいないんだ

で、思わず地面を蹴ったらひどい埃さ

ニワトリを寝かさなきゃお手上げなのに

ホラホラ、逃げ回っちゃダメよ

 

 細野さんは「ジャンプ・スタイルのカヴァーが多い中、唯一ブギウギ・スタイルで歌っているのがマルチ・タレントのフィル・ハリスだ。1947年に録音したものだが、ブギの中でも秀逸な出来で、これをカヴァーするのが長年の夢だった」と書いている。

そのフィル・ハリスの曲がこれ。


Phil Harris - Ain't Nobody Here But Us Chickens 1947

 

歌詞はこちら。

One night farmer Brown was takin' the air
Locked up the barnyard with the greatest of care
Down in the hen house something stirred
When he shouted, "who's there?"

" who's there?"

I'm telling the truth

This is what he heard

You can believe or not

There ain't nobody here but us chickens
There ain't nobody here at all
So quiet yourself and stop that fuss
There ain't nobody here but us
We chickens tryin' to sleep and you bust in
And hobble, hobble, hobble, hobble, with your chin

There ain't nobody here but us chickens
There ain't nobody here at all
You're stompin' around and shakin' the ground
You're kicking up an awful dust
We chickens tryin' to sleep and you bust in
And hobble, hobble, hobble, hobble, it's a sin

Tomorrow is a busy day
We got things to do, we got eggs to lay
Worms to catch, ground to scratch
It takes a lot of sittin', gettin' chicks to hatch
There ain't nobody here but us chickens
There ain't nobody here at all
So quiet yourself and stop that fuss
There ain't nobody here but us
And kindly point that gun the other way
And hobble, hobble, hobble off and hit the hay

Tomorrow is a busy day
We got things to do, we got eggs to lay
Worms to catch and ground to scratch
It takes a lot of settin', gettin' chicks to hatch
There ain't nobody here but us chickens
There ain't nobody here at all
So quiet yourself and stop that fuss
There ain't nobody here but us
And kindly point that gun the other way
And hobble, hobble, hobble off and hit the hay.

 

フィル・ハリス版を聴いていると、情景が見えてきて面白い。

上の赤字の箇所が細野版にない歌詞だが、ここがフィル・ハリス版のキモだと思われる。

最初に農夫のブラウンが鶏小屋を見に行って、「誰だ? そこにいるのは?」と叫ぶまでは農夫視点。

このあと、フィル・ハリス版では歌手が「僕(話者=歌手)の話は本当さ。ブラウンはこんな声を聞いたんだ。君たち(聴衆)は信じられないかもしれないけどね」とナレーションを噛ませる。

そしてそこからはすべてニワトリ視点。

ニワトリたちが「俺たちニワトリは忙しいんだ。俺たちに銃を向けるな。さっさと寝ろ(hit the hay)」と農夫のブラウンに文句を言っているのだ。

(「動物農場」みたいな世界だがこの歌のほうが先だ)

ニワトリの歌だが、刑務所か捕虜収容所で看守に盾突いている歌にも聞こえる。

いろんな状況に置き換えられるのがこの歌の面白いところだ。

ジャン・ジロドゥ「トロイ戦争は起こらない」

ジャン・ジロドゥ〈1〉トロイ戦争は起こらない(ハヤカワ演劇文庫41)

ジャン・ジロドゥ〈1〉トロイ戦争は起こらない(ハヤカワ演劇文庫41)

 

 

 元々は「『イリアス』への序」という仮タイトルで執筆され、トロイ対ギリシャの開戦直前の一日が描かれている。
 主なテーマは国内における和平派と開戦派の対立および二国間の外交交渉。ジロドゥは登場人物たちに、自らの実人生や創作から採ってきた要素を分配する。

  戦争など起こらないほうがいい。その努力を今の宰相はしているのか?

アルメンドロス@トリュフォー

 

トリュフォー 最後のインタビュー

トリュフォー 最後のインタビュー

 

 

蓮實 私の大学の学生のなかに、すでに四年前にトリュフォーにおけるロウソクをめぐる論文(松浦寿輝「燃えあがる文字、書かれた炎」、同人誌「闇祭」第一号所載)を書いた者がおります。

(中略)

トリュフォー
 『野性の少年』にもロウソクのシーンはあったし……時代物にはロウソクが出てくるからね。わたしの映画にロウソクが出てくるようになったのは、キャメラマンネストール・アルメンドロスの影響によるところが非常に大きいと思います。ロウソクの光だけで顔を撮るといったむずかしい撮影はすべてアルメンドロスの実験です。

山田
 ロウソクの光だけで撮影するといえば、スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』(一九七五)が評判になりましたね。

トリュフォー
 フフフ……アルメンドロスが言うには、あれは『野性の少年』の影響だと。

山田
 ネストール・アルメンドロスはいつもその種の実験をやるキャメラマンなのですか。

トリュフォー
 そもそもドキュメンタリーをやっていた人なので、人工的な照明などあまり好まず、原則としてノー・ライトで撮影しようとするのです。『野性の少年』では、四方が真っ白な壁の部屋で、床に鏡を沢山置いて、外から射し込んでくる光を反射させ、それだけで室内撮影をしたりしました。ロウソクの光だけで撮ろうと言い出したのもアルメンドロスで、とはいうものの、さすがに心配で、フィルムを現像所に送ってから、うつっているかどうか確かめるまで眠れなかったと言っていました(笑)。


(一九七九年一二月六日、東京にて)

グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル

 



ジャン・コクトー
たかが世界の終わり 」までのドキュメンタリー。「バウンド・トゥ・インポッシブル」の原題はXavier Dolan: à l'impossible je suis tenu。
A l'impossible je suis tenuというのはジャン・コクトーの「オルフェ」に出てくる言葉らしい。
「不可能を追い求めて」みたいな訳だったかな。
元々はA l'impossible nul n'est tenu(不可能なことをする義務はだれにもない)という諺。
なので、あえて不可能なことをやる、という意味が際立つ。

 

※追記

レオス・カラックスの「汚れた血」でミシェル・ピコリ

「A l'impossible on est tenu, Hans.(不可能に挑むんだよ ハンス)」

と語っていた。

映画の後半、カフェで白髪の男性の後姿を見て「あれ、ジャン・コクトーじゃないか?」「いや、ジャン・コクトーはもう死んでる」という台詞もある。

グザヴィエ・ドランは果たしてジャン・コクトー好きなのか、レオス・カラックス好きなのか。それとも両方か。

アナトール・フランス
2016年、カンヌ映画祭グランプリのスピーチでグザヴィエ・ドランアナトール・フランスを引用した。

"J'ai toujours préféré la folie des passions à la sagesse de l'indifférence." 
(無関心な分別より情熱的な狂気を選ぶ)


これは「シルヴェストル・ボナールの罪」という作品に出てくるらしい。

 

シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

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花様年華

花様年華」にすごい衝撃を受けた。
背後からのスローモーションにね。


(「胸騒ぎの恋人」を見た時、感じたことが裏づけされてよかった)

  

花様年華 [DVD]

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【画】

「まずファッション誌を山のように買う。ページをめくりながら次々と写真に目を通していくんだ。ひらめきを感じたらすぐに破り取る」


あと、「まず音楽、次に予告編を考え、それから撮影」と言っていた。
やっぱり断片のひらめきを大事にする映画作家なんだなあ。


「終電車」@トリュフォー最後のインタビュー

 ※蓮實重彦山田宏一トリュフォー 最後のインタビュー」より。

【反ユダヤの劇評家ダクシア】

ドパルデューの役には、ジャン・マレーの自伝から来ている部分があります。たとえば彼がドイツ軍に協力する劇評家に殴りかかる場面がありますが、あれなどはまさにそっくりジャン・マレーの回想から来ているものです。事実、映画のなかで描いたように、雨が降っていた。この殴られる劇評家、ダクシアは、戦時中の親独派の新聞「ジュ・スュイ・パルトゥー」で演劇評を書いていたアラン・ロブローという有名な劇評家をモデルにしています。
(略)
占領時代、ナチを信奉するフランス人の多くが男性的な力強さを讃美して、ドイツは勝ち誇るオスであり、フランスは敗北したメスであるとみなして、ユダヤ人と同性愛者を同じ一つの憎悪の対象にくくっていた。アラン・ロブローを筆頭に当時のファシストの劇評家は一様にアンリ・バタイユの「ユダヤがかった」演劇やジャン・コクトーの「女々しい」芝居を口汚く罵倒したのです。そうした二重の人種偏見による執念深く、狂信的で性的差別にもかかわる側面はジャン=ポール・サルトルの「ユダヤ人」に見事に分析されているとおりです。


【ドイツ軍占領下のフランス人の生活】

当時の人気作家はジャン・アヌイだったと思います。役者ではシャルル・デュラン、それにピエール・フレネー。サルトルカミュの戯曲が話題になったのは戦時中から戦後にかけてでしょう。ジェラール・フィリップはまだスターではなかった。両親はサルトルカミュではなく、ふつうのブルジョワ劇を観ていたようです。それにクローデル。こうした直接的な記憶のほかに、アンリ・アムルーの「ドイツ軍占領下のフランス人の生活」という本を何度も読み、重要な部分には赤線まで引いていた。これは、サーカス、芝居、映画、ミュージック・ホール、シャンソン等々のいくつかの章を持った二冊本で、資料としては完璧なものでした。奇妙なことにこの著者は右翼系の人ですが、多くのドキュメントが含まれていて大変有意義で正確な本でした。

なぜ日本は焼き尽くされたのか

BS1スペシャル「なぜ日本は焼き尽くされたのか~米空軍幹部が語った“真相”」
初放送 2017年8月13日(日) 午後10時00分(110分)

 72年前、日本はなぜ焼け野原になったのか?アメリカ軍を取材中の今年4月、米軍内施設で半世紀以上前の空軍幹部246人の肉声テープを発見。日本への空爆を計画し実行したカーチス・ルメイなど幹部の貴重な証言だった。軍内の記録用インタビューのため、野望や焦りなど本音が赤裸々に語られていた。膨大な予算のB29開発の失敗。陸海軍との対立や屈辱。米大統領の圧力。後のない空軍幹部たち…日本への無差別爆撃の真相に迫る


【立場が弱かった空軍】

空軍はある航空兵器に命運を託していた。
原爆をしのぐ開発費をかけて作り上げられたB29。
しかし思い描いた戦略はことごとく失敗。アメリカ軍内部で突き上げられ追い込まれていく。
ローリス・ノースタッド将軍(※アーノルド司令官の参謀)
「空軍大将は恥ずかしいと全員に怒っていた」
ヘイウッド・ハンセル将軍
「B29を持つ空軍は深刻な非難にさらされた」
カーチス・ルメイ将軍
「自分のクビがかかっていた」
アメリカ軍の中では空軍と陸・海軍との激しい対立が起きていた。
しかも空軍は陸軍の下部組織で、きわめて弱い立場だった。


空爆を足がかりに独立】

現在32万人で構成されるアメリカ空軍。
世界最強のこの空軍が設立されたのは戦後の1947年。
実は第2次世界大戦中、アメリカに独立した空軍は存在していなかった。
(略)
(陸軍航空軍司令官)ヘンリー・“ハップ”・アーノルドが命じたのが東京大空襲
10万人もの人々が犠牲になった。
さらに戦争末期、日本の60以上の都市を焼夷弾で徹底的に空爆し続けた。
終戦までのわずかな期間で40万人ともいわれる人々が犠牲になった。
陸軍航空軍はこの空爆の戦果を足がかりに戦後独立したのだ。

 

 

 

ジョシュア・フォア「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」

【新しい技術を獲得する3つの段階】

※1960年代、心理学者ポール・フィッツとマイケル・ボスナーが提唱。
(1)認知段階:課題を分析。上達するための新戦略を発見
(2)連合段階:集中力を要しなくなり、大きなミスが減り、効率よくなる
(3)自律的段階:自動操縦のような状態(上達が止まる)


プラトー状態を超える方法】

※アンダース・エリクソンが「集中的訓練」と命名
(1)自分の技術に集中する
(2)目的を持ち続ける
(3)パフォーマンスについて常にすみやかにフィードバックを得る
→自ら「認知段階」にとどまる。


【失敗してみる】

・トップレベルのフィギュアスケート選手:失敗しやすいジャンプに練習時間を割く
(経験の浅いスケート選手はすでにマスターしたジャンプに時間を割く)

・タイピング:タイピングの速度を上げ、間違いをさせる


【達人になった気になる】

・自分よりはるかにレベルの高い特定の人物になったつもりになり、その人ならどうやって問題を克服するだろうかと想像すること
(例1)ベンジャミン・フランクリン:偉大な哲学者の論文を読み、フランクリン自身の論理で著者の主張を再構成し、元の文章と比べて自分の思考が大家のものと合っているか確認
(例2)トップクラスのチェス選手:1日のうちの数時間をグランドマスターの試合を一手一手再現することに費やし、達人の志向を理解することに努めている