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『マルクス・エンゲルス』(ラウル・ペック監督、2017年)①枯れ枝を拾って悪い?

マルクス・エンゲルス』(原題は『若き日のカール・マルクス Le Jeune Karl Marx』)の冒頭(1843年4月 ケルン)に生木(なまき)と枯れ枝の話が出てくる。

これがよく分からなかったので調べたところ、実に興味深い話だった。

マルクスが1842-43年にライン新聞の編集者として働いている時、ライン州で木材窃盗取締法に関する討論が行われた。枯れ枝を拾う民衆を取り締まるべきかどうか。マルクスは取り締まりを批判する。

いわく、ヘビの抜け殻がヘビと有機的関連を持っていないのと同様、枯れ枝は木との有機的関連はない。

ところで豊かな樹木と枯れ木の関係は富める者と貧しい者との関係と同じだ。枯れ木(もしくは落穂)は貧民側の物、共有財産であり、それらを拾うのは貧民階級の慣習的権利だと。

参考論文

 

映画の英語台本がネットにあったので、引用したい。

To gather green wood, one must rip it violently from the living tree.
Yet gathering dead wood removes nothing from the property.
Only what is already separated is removed from the property.
Despite this essential difference, you call both acts theft and punish them as such.

生木を手に入れるには
枝を切らなければならない

だが枯れ枝を集めるのは
誰の痛手も負わない

木から落ちた物なのだから
誰の財産でもないのだ

生木と枯れ枝は
全く別物だというのに

どちらも罰する法律が
作られようとしている

 

Montesquieu names two kinds of corruption.
One when the people do not observe the laws.
The other when the laws corrupt them.

腐敗には2種類あると
モンテスキューは説いた

1つは法を守らぬ民衆の腐敗

もう1つは
民衆を堕落させる法の腐敗

 

You have erased the difference between theft and gathering.
But you are wrong to believe it is in your interest.
The people see the punishment, but not the crime.
And, as they do not see a crime...
when they are punished, you should fear them, for they will take revenge.

州議員たちは枯れ枝集めを
窃盗とみなしている

だが その考えは
何の利益も生むことはない

民衆は罰を受けても
それを罪とみなすことはない

覚悟するがいい

罰せられた民衆たちが
恨みを晴らす時を

 

つまりマルクスは新法を作って枯れ枝を拾う民衆を罰しようとする立法者に対して「いつかしっぺ返しを食らうぞ」と忠告している。

 

私のような無知の者からするとマルクスの本は経典のような印象だったが、このように現実的な問題、時事問題からマルクスがさまざまな文章を書いていったというのが新鮮に思えた。