お世話になりました

愛すべきものすべてに捧げます

ジャン・ジロドゥ「トロイ戦争は起こらない」

ジャン・ジロドゥ〈1〉トロイ戦争は起こらない(ハヤカワ演劇文庫41)

ジャン・ジロドゥ〈1〉トロイ戦争は起こらない(ハヤカワ演劇文庫41)

 

 

 元々は「『イリアス』への序」という仮タイトルで執筆され、トロイ対ギリシャの開戦直前の一日が描かれている。
 主なテーマは国内における和平派と開戦派の対立および二国間の外交交渉。ジロドゥは登場人物たちに、自らの実人生や創作から採ってきた要素を分配する。

  戦争など起こらないほうがいい。その努力を今の宰相はしているのか?

アルメンドロス@トリュフォー

 

トリュフォー 最後のインタビュー

トリュフォー 最後のインタビュー

 

 

蓮實 私の大学の学生のなかに、すでに四年前にトリュフォーにおけるロウソクをめぐる論文(松浦寿輝「燃えあがる文字、書かれた炎」、同人誌「闇祭」第一号所載)を書いた者がおります。

(中略)

トリュフォー
 『野性の少年』にもロウソクのシーンはあったし……時代物にはロウソクが出てくるからね。わたしの映画にロウソクが出てくるようになったのは、キャメラマンネストール・アルメンドロスの影響によるところが非常に大きいと思います。ロウソクの光だけで顔を撮るといったむずかしい撮影はすべてアルメンドロスの実験です。

山田
 ロウソクの光だけで撮影するといえば、スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』(一九七五)が評判になりましたね。

トリュフォー
 フフフ……アルメンドロスが言うには、あれは『野性の少年』の影響だと。

山田
 ネストール・アルメンドロスはいつもその種の実験をやるキャメラマンなのですか。

トリュフォー
 そもそもドキュメンタリーをやっていた人なので、人工的な照明などあまり好まず、原則としてノー・ライトで撮影しようとするのです。『野性の少年』では、四方が真っ白な壁の部屋で、床に鏡を沢山置いて、外から射し込んでくる光を反射させ、それだけで室内撮影をしたりしました。ロウソクの光だけで撮ろうと言い出したのもアルメンドロスで、とはいうものの、さすがに心配で、フィルムを現像所に送ってから、うつっているかどうか確かめるまで眠れなかったと言っていました(笑)。


(一九七九年一二月六日、東京にて)

グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル

 



ジャン・コクトー
たかが世界の終わり 」までのドキュメンタリー。「バウンド・トゥ・インポッシブル」の原題はXavier Dolan: à l'impossible je suis tenu。
A l'impossible je suis tenuというのはジャン・コクトーの「オルフェ」に出てくる言葉らしい。
「不可能を追い求めて」みたいな訳だったかな。
元々はA l'impossible nul n'est tenu(不可能なことをする義務はだれにもない)という諺。
なので、あえて不可能なことをやる、という意味が際立つ。

 

※追記

レオス・カラックスの「汚れた血」でミシェル・ピコリ

「A l'impossible on est tenu, Hans.(不可能に挑むんだよ ハンス)」

と語っていた。

映画の後半、カフェで白髪の男性の後姿を見て「あれ、ジャン・コクトーじゃないか?」「いや、ジャン・コクトーはもう死んでる」という台詞もある。

グザヴィエ・ドランは果たしてジャン・コクトー好きなのか、レオス・カラックス好きなのか。それとも両方か。

アナトール・フランス
2016年、カンヌ映画祭グランプリのスピーチでグザヴィエ・ドランアナトール・フランスを引用した。

"J'ai toujours préféré la folie des passions à la sagesse de l'indifférence." 
(無関心な分別より情熱的な狂気を選ぶ)


これは「シルヴェストル・ボナールの罪」という作品に出てくるらしい。

 

シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

 

 

花様年華

花様年華」にすごい衝撃を受けた。
背後からのスローモーションにね。


(「胸騒ぎの恋人」を見た時、感じたことが裏づけされてよかった)

  

花様年華 [DVD]

花様年華 [DVD]

 

 
【画】

「まずファッション誌を山のように買う。ページをめくりながら次々と写真に目を通していくんだ。ひらめきを感じたらすぐに破り取る」


あと、「まず音楽、次に予告編を考え、それから撮影」と言っていた。
やっぱり断片のひらめきを大事にする映画作家なんだなあ。


「終電車」@トリュフォー最後のインタビュー

 ※蓮實重彦山田宏一トリュフォー 最後のインタビュー」より。

【反ユダヤの劇評家ダクシア】

ドパルデューの役には、ジャン・マレーの自伝から来ている部分があります。たとえば彼がドイツ軍に協力する劇評家に殴りかかる場面がありますが、あれなどはまさにそっくりジャン・マレーの回想から来ているものです。事実、映画のなかで描いたように、雨が降っていた。この殴られる劇評家、ダクシアは、戦時中の親独派の新聞「ジュ・スュイ・パルトゥー」で演劇評を書いていたアラン・ロブローという有名な劇評家をモデルにしています。
(略)
占領時代、ナチを信奉するフランス人の多くが男性的な力強さを讃美して、ドイツは勝ち誇るオスであり、フランスは敗北したメスであるとみなして、ユダヤ人と同性愛者を同じ一つの憎悪の対象にくくっていた。アラン・ロブローを筆頭に当時のファシストの劇評家は一様にアンリ・バタイユの「ユダヤがかった」演劇やジャン・コクトーの「女々しい」芝居を口汚く罵倒したのです。そうした二重の人種偏見による執念深く、狂信的で性的差別にもかかわる側面はジャン=ポール・サルトルの「ユダヤ人」に見事に分析されているとおりです。


【ドイツ軍占領下のフランス人の生活】

当時の人気作家はジャン・アヌイだったと思います。役者ではシャルル・デュラン、それにピエール・フレネー。サルトルカミュの戯曲が話題になったのは戦時中から戦後にかけてでしょう。ジェラール・フィリップはまだスターではなかった。両親はサルトルカミュではなく、ふつうのブルジョワ劇を観ていたようです。それにクローデル。こうした直接的な記憶のほかに、アンリ・アムルーの「ドイツ軍占領下のフランス人の生活」という本を何度も読み、重要な部分には赤線まで引いていた。これは、サーカス、芝居、映画、ミュージック・ホール、シャンソン等々のいくつかの章を持った二冊本で、資料としては完璧なものでした。奇妙なことにこの著者は右翼系の人ですが、多くのドキュメントが含まれていて大変有意義で正確な本でした。

なぜ日本は焼き尽くされたのか

BS1スペシャル「なぜ日本は焼き尽くされたのか~米空軍幹部が語った“真相”」
初放送 2017年8月13日(日) 午後10時00分(110分)

 72年前、日本はなぜ焼け野原になったのか?アメリカ軍を取材中の今年4月、米軍内施設で半世紀以上前の空軍幹部246人の肉声テープを発見。日本への空爆を計画し実行したカーチス・ルメイなど幹部の貴重な証言だった。軍内の記録用インタビューのため、野望や焦りなど本音が赤裸々に語られていた。膨大な予算のB29開発の失敗。陸海軍との対立や屈辱。米大統領の圧力。後のない空軍幹部たち…日本への無差別爆撃の真相に迫る


【立場が弱かった空軍】

空軍はある航空兵器に命運を託していた。
原爆をしのぐ開発費をかけて作り上げられたB29。
しかし思い描いた戦略はことごとく失敗。アメリカ軍内部で突き上げられ追い込まれていく。
ローリス・ノースタッド将軍(※アーノルド司令官の参謀)
「空軍大将は恥ずかしいと全員に怒っていた」
ヘイウッド・ハンセル将軍
「B29を持つ空軍は深刻な非難にさらされた」
カーチス・ルメイ将軍
「自分のクビがかかっていた」
アメリカ軍の中では空軍と陸・海軍との激しい対立が起きていた。
しかも空軍は陸軍の下部組織で、きわめて弱い立場だった。


空爆を足がかりに独立】

現在32万人で構成されるアメリカ空軍。
世界最強のこの空軍が設立されたのは戦後の1947年。
実は第2次世界大戦中、アメリカに独立した空軍は存在していなかった。
(略)
(陸軍航空軍司令官)ヘンリー・“ハップ”・アーノルドが命じたのが東京大空襲
10万人もの人々が犠牲になった。
さらに戦争末期、日本の60以上の都市を焼夷弾で徹底的に空爆し続けた。
終戦までのわずかな期間で40万人ともいわれる人々が犠牲になった。
陸軍航空軍はこの空爆の戦果を足がかりに戦後独立したのだ。

 

 

 

ジョシュア・フォア「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」

【新しい技術を獲得する3つの段階】

※1960年代、心理学者ポール・フィッツとマイケル・ボスナーが提唱。
(1)認知段階:課題を分析。上達するための新戦略を発見
(2)連合段階:集中力を要しなくなり、大きなミスが減り、効率よくなる
(3)自律的段階:自動操縦のような状態(上達が止まる)


プラトー状態を超える方法】

※アンダース・エリクソンが「集中的訓練」と命名
(1)自分の技術に集中する
(2)目的を持ち続ける
(3)パフォーマンスについて常にすみやかにフィードバックを得る
→自ら「認知段階」にとどまる。


【失敗してみる】

・トップレベルのフィギュアスケート選手:失敗しやすいジャンプに練習時間を割く
(経験の浅いスケート選手はすでにマスターしたジャンプに時間を割く)

・タイピング:タイピングの速度を上げ、間違いをさせる


【達人になった気になる】

・自分よりはるかにレベルの高い特定の人物になったつもりになり、その人ならどうやって問題を克服するだろうかと想像すること
(例1)ベンジャミン・フランクリン:偉大な哲学者の論文を読み、フランクリン自身の論理で著者の主張を再構成し、元の文章と比べて自分の思考が大家のものと合っているか確認
(例2)トップクラスのチェス選手:1日のうちの数時間をグランドマスターの試合を一手一手再現することに費やし、達人の志向を理解することに努めている


ハリー@「第三の男」

 

第三の男【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

第三の男【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

 

 【観覧車の中・1】

そんなものを見たって気持ちがいいもんじゃない。犠牲者? そんな感傷はよせ。
いいか、あの小さな豆粒の1つが永遠に動くのを止めたとして本当に憐れみを感じるか?
もし1つ止めるたびに2万支払うと言っても、君は本当に金を受け取らないと言うつもりか?
あるいは君は、いくつ豆粒を止められるか数え出すんじゃないのか?
しかも税金がかからないんだぜ。

(You know, l never feel comfortable on these sort of things. Victims ? Don't be melodramatic.
Tell me. Would you really feel any pity if one of those dots stopped moving forever?
lf l offered you 20,000 for every dot that stopped, would you really, old man, tell me to keep my money?
Or would you calculate how many dots you could afford to spend?
Free of income tax, old man.)


【観覧車の中・2】
そう暗くなるなよ。そんなに悪いもんでもないさ。
ある人がこう言った。イタリアではボルジア家の30年間で戦争だと恐怖だの殺人だのでたくさんの血が流れた。だがその間にミケランジェロレオナルド・ダ・ヴィンチルネサンス文化が生まれた。
兄弟愛の国スイスはどうだ。民主主義と平和が500年間続いて何が生まれたと思う? 鳩時計だけさ。
 
(And don't be so gloomy! After all, it's not that awful.
Remember what the fella said: ln ltaly, for 30 years under the Borgias, they had warfare, terror, murder, bloodshed. But they produced Michelangelo, Leonardo da Vinci and the Renaissance.
ln Switzerland, they had brotherly love. They had 500 years of democracy and peace, and what did that produce? The cuckoo clock.)