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悪魔が夜来る(Les Visiteurs du soir)

悪魔が夜来る [DVD]

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 マルセル・カルネ監督とジャック・プレヴェール個人的には「天井桟敷の人々」「陽は昇る」「霧の波止場」のほうが好きだが、この1942年の映画も味わい深い。

悪魔の使いであるジルがドミニクと共に国を荒らしに来るのだが、国の娘と恋に落ちる。そこに悪魔が登場、ジルと娘の仲を引き裂こうとする物語。

ジルは悪魔の使いなのに優しいところがある。冒頭で、熊を殺された熊使いに、熊を蘇らせてあげるシーンが一例だ。

 

Dominique : À quoi bon Gilles ?...

(余計なマネを)
Gilles : Ça m'amuse tout de même de faire le bien, de temps en temps...

(たまには善行もいいさ)
Dominique : À quoi bon Gilles ?...

(無駄だわ)

 

(和訳は字幕より)

アルレッティ演じるドミニクの立場は最後まで微妙なのだが、ジルは明らかに善側の男である。

 

善の側に立つジルに対し、悪魔の仕打ちは容赦ない。

この悪魔はヒトラーではないか、ナチスではないか、という説もあるようだが(昔話に現代の皮肉を託すのは作り手たちの常套手段だ)、カルネ=プレヴェールのコンビは「天井桟敷の人々」でも「霧の波止場」でも恋を引き裂く男を繰り返し登場させている。だから、この三角関係の構図はプレヴェールのオブセッションなのかもしれない。