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ギヨーム・カネの監督デビュー作『Mon Idole(僕のアイドル)』(2002)

 俳優ギヨーム・カネの監督デビュー作『Mon Idole(僕のアイドル)』(2002年仏)は、テレビ業界の内幕を滑稽に描いた意欲作。

 新米ADが憧れの大物プロデューサーに新番組の企画を売り込み、業界での成功を掴もうとする、という粗筋。言うなれば、オリヴァー・ストーン監督『ウォール街』の舞台をNYの証券業界からパリのセレブ界に移したような設定だ。

 『ウォール街』で「欲望は善。欲望は正しい」と演説を打って異様な存在感を見せるマイケル・ダグラス同様、『僕のアイドル』のカリスマプロデューサー(フランソワ・ベルレアン)の存在感も強烈。

 前半では堅固だった師弟関係が後半に入って綻び、裏切り、失望、憎悪、絶交へと繋がっていくストーリーも一緒。ただし、最後までシリアスな『ウォール街』と違い、『僕のアイドル』は途中から荒唐無稽な乱痴気騒ぎになる。

 登場人物の業界人たちは、映画の冒頭で自分たちが企画していた視聴者参加型ヴァラエティー番組と同じ状況にハマる。番組に出演する無垢な一般人を煽り、茶化し、嘲笑う側だったのが、いつの間にか観客に嘲笑われる側に転じてしまうのだ。

 低俗番組を地で行くような終盤は好き嫌いが分かれるだろう。だが、各所にちりばめられたギヨーム・カネの映画愛が微笑ましく、当時の妻だったダイアン・クルーガーとの共演も見どころ。フランソワ・ベルレアンの名演も一見の価値ありだろう(でも日本ではDVDすら出ていない)。