抑えの利いたサスペンスの秀作『ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者』
ロマン・デュリス主演だが日本では劇場未公開。WOWOWで放送された後、DVD化された作品。
主人公ポールは、妻の不倫相手を殺してしまった後、その男になりすまして、子供のころからの憧れだった写真家として新たな人生を送り始める…。「太陽がいっぱい」を彷彿とさせるサスペンスだ。
『真夜中のピアニスト』『スパニッシュ・アパートメント』『ムード・インディゴ』などと同様、この作品でもロマン・デュリスは悩める男を好演。切実な自分探しを続ける。
…というか、この作品では「顔のない逃亡者」という副題が示すとおり、自分探しを超越して、自分を探したいのか、それとも自分を消したいのか自分でもよく分からず、あがき続ける主人公が見ものだ。
抑えが利いた演出で、編集がクール。そして映像も美しい。主人公は写真家志望で写真を撮り続けるが、その写真の美しさも本作品に説得力を与えている。劇場未公開というのがもったいなく思える。
この作品を手掛けたエリック・ラルティゴ(Eric Lartigau)監督は、他にも何本か監督しているが、日本ではいずれも未公開。
でも2014年の「エール!」は日本公開されてよかった。
ダグラス・ケネディの同名小説が原作ということで、こちらもチェックしたい。