レオス・カラックス監督「汚れた血」のラスト
レオス・カラックス監督「汚れた血」のラストでアレックスがこう呟く。
Un jour, ça sera comme quand on a déjà vécu.
日本語字幕では「いつか十分に生きたと言える日が…」となっていたが、これはヴェルレーヌのKaléidoscopeという詩の引用だ。
(ちなみにタイトルのMauvais Sangはランボーの引用)
Kaléidoscopeの最初の2連を引用する。
Dans une rue, au coeur d'une ville de rêve
Ce sera comme quand on a déjà vécu :
Un instant à la fois très vague et très aigu...
Ô ce soleil parmi la brume qui se lève !
Ô ce cri sur la mer, cette voix dans les bois !
Ce sera comme quand on ignore des causes ;
Un lent réveil après bien des métempsycoses :
Les choses seront plus les mêmes qu'autrefois
「ある通り、夢のような街の真ん中で/それはもう既に生きたことがある時のようなものだろう」
この論文によるとヴェルレーヌがブリュッセルで投獄され、牢屋を出た後の都市風景を描いているそうで、既に生きたことがあるような感覚(déjà vécu)というのは7行目のmétempsycoses(輪廻)という言葉ともつながっている。
レオス・カラックスは他人の作品からも自分の作品からも引用をちりばめる人で、どのシーンも「これは何かの引用かも」と思わせるところがある(フランス語参考記事)。
という意味ではどのシーンもアレックスが言う、comme on a déjà vécuの感じがするのだ。
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